124 / 260
第124話
先に進むと大きな水槽が目の前に飛び込んできた。
そこには先に行っていた宮内くんと渡辺くんの姿もあった。
「あ、来た来た」
渡辺くんが俺たちに気づき、手を振った。
宮内くんは水槽に夢中だ。
水槽の中を優雅に泳ぐ魚たち。
自由気ままで、好きなように泳ぐ魚が少し、羨ましかった。
それと同時に、水槽に閉じ込められて、一生そこで過ごすのが可哀想だとも思った。
囚われて、逃れられない。
まるで、
「俺みたい…」
「何が?」
隣から声が降ってきて、見るとそこには佑嗣が立っていた。
「何が"俺みたい?"あ、このサメ?」
なんて指差した先に居たのは、黒くて細いサメだった。
「え?」
「えっと…クロトガリザメだって。細くてカッコいいってこと?」
「ちょ、違うし」
「でも似てると思わない?」
そう言って2人で水槽を再び覗き込む。
ゆったりと泳いでるそのクロトガリザメは、ジンベイザメの半分くらいの大きさで、迫力には欠ける。
でも、確かにカッコいい。
「カッコいいけど、俺みたいなわけじゃなくてっ」
「ふはっ、ごめんごめん。なんか難しい顔して水槽見てたから」
ぽんと肩を軽く叩かれた。
「せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だよ?側には俺がいるし、今は鷹来だっているだろ?」
チラッと佑嗣が鷹来くんの方を見ると、宮内くんと何やら語り合っている。
「ふっ…そうだよね」
俺が笑うと、佑嗣も笑った。
沈んでいた気持ちが一気に浮上した。
そうだよ。せっかくの修学旅行、楽しまなきゃ…。
ともだちにシェアしよう!