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第128話
「んっ…たか、っ…」
唇が離れていって、思わずそれを目で追いかける。
「そんな物欲しそうな顔して」
「物欲しっ…!?そんな顔してないっ」
「してないの?」
「してないよ!」
「欲しくないの?」
「…っもう、鷹来くんってほんとずるい」
トンと肩に額を押し付けた。
「ふっ、ごめん。なぁ、顔見せて」
「……」
「かーじーろっ」
俺が顔を上げないでいると、ちゅっと耳にキスされた。
「っ…」
そして、耳の縁を舌がなぞっていく。
「ひっ…ちょ、やだそれっ無理」
パッと顔を離して見上げたら、目が合った。
「やっとこっち向いた」
優しく笑う顔に、俺も自然と笑顔になる。
そして顔に影が落ちて、もう一度唇が合わさる。
受け身なばかりで、俺が応えたことはない。
そんなことを考えてると、ゆっくり唇が離れて、ペロッと俺の唇を舐めた。
あ…
「同じ…」
無意識に呟いていた。
鷹来くんは顔を離して、俺の顔を見下ろした。
「何が?」
「今のキスがしょ……………」
そこまで言って、ハッと我に帰る。
こんなこと、鷹来くんは聞きたくないかもしれない。
俺だって忘れたいって言ってるのに、キスの仕方ひとつで思い出すなんて…
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