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第137話
「神代…」
鷹来くんがベッドに近づいてきて、俺の手首を縛っていたコードを解いてくれた。
「全部、嘘だったの?」
俺の問いかけに、鷹来くんは目を伏せた。
「……全部嘘だった。全部わざとで、全部計算だったんだ。ごめん…。でもっ」
「もういい。聞きたくない」
「神代…」
さっきまで、涙なんて出なかったのに、嘘だって鷹来くん本人の口から聞いた今、涙が一粒シーツへ落ちた。
「っ、……せめて、その傷の手当て…」
伸びてきた手を叩いた。
「触んないで」
「神代…」
どうして、鷹来くんが傷ついた顔するの….?
そんなのずるい。
「鷹来くんのこと、全然好きになれなかったって言えたら良かったのに…」
「っ!…神代、聞いて…」
「何も聞きたくない」
「俺はっ」
「聞きたくないってば!」
手元にあった枕を鷹来くんに投げつけた。
そして中途半端に脱がされていた服を着なおして、俺はベッドから降りた。
「待って、どこに…」
「…」
何も言わず、顔を見もせずに俺は部屋を出た。
鷹来くんが追いかけて来ることはなかった。
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