138 / 260

第138話

ある部屋に行き、ベルを鳴らした。 「…瑛翔?っ…それ…!」 「佑嗣…俺……」 「とりあえず中入って。同室のやつ他の部屋に遊び行ってるから」 佑嗣は俺を部屋の中へ入れてくれて、扉を閉め、チェーンをかけた。 俺が佑嗣を見ると、 「急に入って来られても困るし」 と言った。 部屋の奥まで来れば椅子に座らされた。 「それ、祥馬…?」 首に触れると痛みが走って、指先に血がついた。 「…嘘だった」 「ん?」 「俺、信じられなくて…でもっ」 「瑛翔落ち着いて、まずは傷の消毒しよう?って言っても消毒液なんてないし…タオル濡らしてくるから待ってて」 「いい、要らないからっ、ここに居てっ…佑嗣…」 「…っ分かった、分かったから。でも傷のところ綺麗にしないと。一緒に行こう?」 「ん…」 俺は頷いた。 佑嗣は俺を立ち上がらせ、手を引いて洗面所まで一緒に来て、タオルを濡らして俺の首筋を軽くトントンと叩くように拭いてくれた。 そして一緒にまた戻った。 「シークワーサージュースしかないけど、はい」 差し出してくれたコップに入ったシークワーサージュースを飲んで、息を吐き出す。 「…すっぱい」 「シークワーサーだからな。落ち着いた?」 「…うん、ありがとう」 「何があったのか、聞いてもいい?話せる?」 「うん……。あの、鷹来くんが俺に近づいたのは、祥馬に言われたからだった、みたい…」 「え?」 佑嗣は目を丸くして驚いている。 「どういうこと?」 「分かんない、分かんないけど、さっき祥馬に言われて…鷹来くんもそれを否定しなくて、全部嘘だったって言われて…」 「つまり、鷹来は祥馬の指示で瑛翔に近づいたってこと?」 俺は頷く。 「…俺にはそんな風に見えなかったけど」 「俺だって…っ。でも、本人がそう言ったんだよ、全部嘘で、わざとで、計算だったって。祥馬じゃなくて、鷹来くん本人が。それに、さっき祥馬に、……」 思い出して、ぎゅっと手を握る。 「何かされた?」 「触られた。それに…祥馬のを、口に入れられた。それを鷹来くんは見てるだけで、最後まで助けてはくれなかった」 「辛かったな…」

ともだちにシェアしよう!