139 / 260

第139話

「あいつ…泣かすなって言ったのに」 佑嗣のその言葉で、自分が泣いてることに気づいた。 「俺、まだ鷹来くんのこと好きじゃないと思ってた。祥馬に向けてた想いとは違ったから…。でも、思ってた以上に、鷹来くんのこと好きになってたみたい」 「うん」 「でも、鷹来くんは嘘って…」 「うん」 「もう、どうすればいいのか分からない…」 俯いた俺を、佑嗣は優しく引き寄せて頭を撫でてくれた。 「瑛翔、今日はもう休もう。な?」 「うん…」 「同室のやつには連絡して、瑛翔の部屋に行ってもらうから」 「ごめん…」 「謝らなくていいよ。瑛翔は何も悪くないんだから。ほら、もう寝よう?」 俺をベッドへ寝かせて、そしたら佑嗣も同じベッドに入って来た。 「…佑嗣?」 「一緒に寝よ」 「うん…」 「なんかさ、小さい頃思い出すな」 「ふっ、そうだね」 小さい頃は俺の両親が家を空けることが多くて、よく佑嗣の家に預けられていた。 「自分の枕じゃなきゃ眠れない〜って最初の頃は泣いてたよな」 「えー?そうだっけ?」 「そうだよ、忘れたの?」 「覚えてないよそんな昔のこと」 「俺は覚えてるけどなー?」 「ふっ」 「ははっ」 顔を見合わせて2人で笑う。 「修学旅行、明日で最終日だし、最後まで楽しもうな」 「うん、ありがとう」 そして俺たちは眠りについた。

ともだちにシェアしよう!