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第145話

鷹来くんに声をかけられた。 俺が見上げない限り、目が合うことはない。 「あのさ、少し2人で話したいんだけど」 なにを話すって言うんだろう。 あ…別れ話か。 「神代?」 「あ、ごめん、今はまだ鷹来くんと話せない。俺の中で整理したいから、だから今度…」 「今度って…」 「せめて、修学旅行が終わってから…」 「分かった」 鷹来くんは頷くと俺から離れて、宮内くんたちの方へ行った。 そして佑嗣が俺に声をかけてくれた。 「瑛翔、大丈夫?」 「うん…」 「鷹来なんて?」 「いや、話したいって言われて…」 「うん」 「今度って断っちゃった」 「そう…」 それ以上は何も聞かれなくて、一緒にお土産を見て回った。 自由時間はそんなに長い時間でもなかったから、あっという間に集合時間となった。 そして、3泊4日の修学旅行は色々なものを壊して、終わりを告げた。 次の日は休みで、一日中ベッドの上でごろごろしていた。 頭に浮かぶのは鷹来くんと祥馬のことばかりだった。 祥馬のことを忘れさせてくれると言った鷹来くん。 鷹来くんの存在は、いつの間にか俺の中で大きくなっていた。 でも、祥馬のことを忘れられた訳じゃない。 「忘れなきゃいけない人が増えただけじゃん…」 溜め息が漏れた。

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