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第148話
まだ 好き とは呼べないと思っていた小さな想い。
その想いを膨らませていっていいのか、分からないと思っていた。
でも、きっと、そんなことを考えてる時点で、好きだったんじゃないかなと、今は思う。
今思えば鷹来くんとお試しで付き合い始めてから、祥馬のことを考える時間は減っていた気がする。
それは他でもない鷹来くんのおかげだったのに。
そりゃ最初は印象も最悪で、全然好きじゃなかったし、どっちかっていうと嫌いに近かった。
でも、優しさに触れて、失礼なことをたまに言うけど、それも楽しくて、俺のことを、大切にしてくれて、
触れられると、温かくて、
ちょっと怖くて、
でも、幸せで……
「っ…ぅ…」
涙が溢れた。
最近泣いてばかりだ。
「もう、こんなの好きじゃん…それなのに、、」
俺たちはお試しどころか、本当は始まってもいなかった。
"好きじゃなくても、キスくらい出来る"
どうして、こんな時に祥馬の言葉が頭に浮かんで来るんだろう。
興味があると言った鷹来くんは、俺のことを好きじゃなかった。
好きじゃなくても、キスしてきた。
でも、温かく感じたんだよ。
佑嗣の温かさと、鷹来くんの温かさが違く思えたのは、俺が鷹来くんのことを、好きになってたから。
「早く気づいてれば、何か変わってたのかな…」
呟いた言葉は誰の元へも届かず、俺に虚しさだけを残して消えていった。
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