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第150話

そして年が明けて、一週間ちょっとの冬休みが終わった。 「おはよう、瑛翔」 「おはよ、寒いね」 「そうだな」 吐く息が白い。 「瑛翔…」 「ん?」 「その、…鷹来と話した?」 「…ううん、話してない」 「…そっ、か…」 佑嗣は多分何か知ってる。 でも、それを俺には話さない。 それは、俺のためなのか、鷹来くんのためなのか分からない。 「どうして?」 「いや、気になってたから…」 「俺は、佑嗣も知ってると思うけど弱い人間なんだよ。弱くてずるい…」 「瑛翔…」 「佑嗣、ごめん」 「いや、謝る必要なんてない」 ぽんと頭を撫でられる。 「早く行こっか」 「うん」 冬休みの間、鷹来くんからは何度かメッセージが届いた。 でも、嘘を吐いて、また今度、と断った。 久々の学校に着くと、ガヤガヤしていて、冬休みは1週間ちょっとだったけど、なんだか学校が懐かしく感じる。 今日は始業式だけで学校は終わった。 散々断ったから、もう声を掛けられないかもしれない。 そんなことを思っていた。 でも、そんなことはなくて… 「神代っ!」 教室を出て廊下を歩いていると声を掛けられた。 「っ…鷹来、くん…」 「話をっ…」 「…なんで?」 「えっ?」 「何で、こんなに拒否してるのに、話しかけてくるの?」 そんなに、ちゃんと終わりにしたい? 「っ、それは、俺が話したいからっ…」 鷹来くんは切羽詰まった様子で言う。それでも俺は、 「……俺、忙しいから、また「また今度?いつになったらその"今度"は来る?」 俺が"また今度"と、何度言ったか分からない言葉を紡ごうとしたら、鷹来くんが俺の声に言葉を被せた。 今までだったら、これで済ませられたのに、今日の鷹来くんは違った。 「…っ」 「お願いだから…、話を聞いて。聞いて、俺のこと嫌いになってもいいから。聞いたら俺のこと切り捨てていいから…っ」 「……分かった」 そして俺は、鷹来くんとあの空き教室へ向かった。 終わりにする、そう決意して。

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