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第152話

Another story side 鷹来 珀音 それから文化祭まで、俺は久城と居るよりも神代たちと一緒に居ることが格段に増えた。 まぁ、一緒に居るっていうか、付き纏っていたに近いんだけど。 最初は嫌悪感がすごく伝わってきてたけど、最近はそうでもないし、神代はよく笑う。 多少は仲良くなれたかなと思う。 文化祭の初日。 神代とは自由時間が被らず、一緒に回れなかった。 俺がクラスの担当時間に久城がやって来て、俺を呼んだ。 「珀音ー、ちょっといいか?」 まだクラスの催しは終わってなかったけど、もう終わりかけてだったから、クラスの子たちに許可をもらい、久城がいる教室の扉の方へ行き、久城に近づいた。 「なに?何かあった?」 「今、瑛翔が音楽室にいる。怪我してて、多分動けないだろうから様子見に行ってやってほしい」 そう言われた。 「怪我?」 「あぁ、とにかくよろしくな。俺澪央のとこ行かないといけないから」 それだけ言うと久城は教室を出て行った。 怪我って、どういうこと? 動けないくらい酷いのか? 急いで言われた通り音楽室に向かった。 音楽室の扉を開けると、すぐに神代の姿が目に入った。 「あ、まだいた!神代、お前久城と…」 中に入り、神代の姿をしっかりと認識した時、驚いた。 首元の衣装が赤く染まっているのに気がついたから。 本人はそれには気づいてなくて、何もない顔を気にしている。頬に触れた時にちらっと見えた手首の跡。 それを見て何となく察した。 「さっき、久城と廊下で会って、音楽室に…って何か言いかけて止めたから、ちょっと気になって来てみれば…」 嘘を吐いた。 久城とたまたま会ったんじゃない。 久城は、わざわざ俺が居ると分かってて、教室に来て、神代の所に行って欲しいと言った。 傷つけたのは久城本人だ。 それなのにあんな風に、様子を見に行ってほしいだなんて、久城は何を考えているんだろう…。

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