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第153話

Another story side 鷹来 珀音 久城も、俺と同じで、興味本位でこんな風に神代に手を出しているのか。 それにしては、酷い。 首の傷は可哀想なくらいに痛々しい。 こんなことをされても、久城のせいだと言わない神代。 それどころか、消毒したくないと言った。 それは、久城から付けられた傷を、治さずに残しておきたいってこと…? 「…嘘だよ。跡残したくないし、保健室行くよ」 神代は笑った。 笑ったけど、その笑顔はこの3週間で見たものとは違って、無理やり作ったような、そんな笑い方だった。 その後は、保健室で手当てをしてもらって、スマホを音楽室に忘れたと言う神代と一緒にまた音楽室に戻った。 音楽室に戻りながら、さっきの神代の笑った顔を思い出す。 あの空き教室で呟いた言葉。 "どうやったら好きって消せるの" 神代はまだ、久城のことが好きだと思う。 さっきの反応からして、これは確実だ。 それでも。これ以上、神代には傷ついて欲しくないと思った。 それは精神的にも、身体的にも、だ。 以前、久城に冗談めかして言われたことがあった。 "珀音が瑛翔のこと見張ってくれてたらいいのにな。あいつには女が群がるし、彼女の噂がなくなった今早かれ遅かれ男が近づくかもしれねぇし" 「なぁ神代」 「ん?なに?」 「前に、どうやったら好きって消せるのかって言ってたじゃん?」 「あー…うん、、」 それを消すのは、 「一番手っ取り早いのは、新しい 好き を見つけることだと思うよ」 もっともらしいことを口にした。 この時、下心なんてなかった。 神代は俺を見上げて、複雑な表情を浮かべてる。 だから俺は笑顔を浮かべた。 「で、その相手に俺がオススメなんだけど、どう?」 久城がまだ好きな神代は、きっと、うんとは言わない。 そう思ってた。 だから、予想外の答えに俺は驚いてしまった。

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