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第154話
Another story side 鷹来 珀音
「俺今、傷ついてるから」
その言葉に、俺の胸がズキンと痛んだ。
でも、今更後には引けない。
「…そこに付け込んでいいわけ?」
「っていうか、俺のこと興味あるとは言ってたけど、それって好きとは違うよね?」
「うーん、そうだね」
「ふはっ…正直過ぎ。そこは嘘でも今は好きって言うところじゃない?」
だって、これ以上…
「嘘は吐きたくないから」
まっすぐに神代を見ると、少し泣きそうになっていた。
「っ…ほんとさぁ、鷹来くん優しすぎじゃない?あの時と印象違い過ぎて困るんだけど」
あの時って言うのは初めてちゃんと話した、空き教室でのことだろう。
「鷹来くんは俺のこと好きじゃない、俺も鷹来くんのことはそういう意味で好きじゃない、って。どちらか一方がすごく好きで結ばれても、その先に幸せは待ってないんだよね」
それは、神代自身の体験した話…?
「始まった時から終わってるのと一緒。俺も、相手のことを好きなれたら良かったんだけど、好きになりたいって思ってる反面、どこかで祥馬以上に好きにはなれないって思ってたんだよね」
神代の言葉は、俺には、すごく重かった。
俺たちは、既に終わってるのかもしれない。
それでも、目の前で泣きそうな神代を、なんとかしたいとも思った。
そして俺と神代は、お試しという形で付き合うことになった。
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