154 / 260

第154話

Another story side 鷹来 珀音 「俺今、傷ついてるから」 その言葉に、俺の胸がズキンと痛んだ。 でも、今更後には引けない。 「…そこに付け込んでいいわけ?」 「っていうか、俺のこと興味あるとは言ってたけど、それって好きとは違うよね?」 「うーん、そうだね」 「ふはっ…正直過ぎ。そこは嘘でも今は好きって言うところじゃない?」 だって、これ以上… 「嘘は吐きたくないから」 まっすぐに神代を見ると、少し泣きそうになっていた。 「っ…ほんとさぁ、鷹来くん優しすぎじゃない?あの時と印象違い過ぎて困るんだけど」 あの時って言うのは初めてちゃんと話した、空き教室でのことだろう。 「鷹来くんは俺のこと好きじゃない、俺も鷹来くんのことはそういう意味で好きじゃない、って。どちらか一方がすごく好きで結ばれても、その先に幸せは待ってないんだよね」 それは、神代自身の体験した話…? 「始まった時から終わってるのと一緒。俺も、相手のことを好きなれたら良かったんだけど、好きになりたいって思ってる反面、どこかで祥馬以上に好きにはなれないって思ってたんだよね」 神代の言葉は、俺には、すごく重かった。 俺たちは、既に終わってるのかもしれない。 それでも、目の前で泣きそうな神代を、なんとかしたいとも思った。 そして俺と神代は、お試しという形で付き合うことになった。

ともだちにシェアしよう!