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第155話

Another story side 鷹来 珀音 文化祭2日目。 着替えるために神代と更衣室に入ろうとした藤白をわざと呼び止めた。 久城が居ると分かってて、神代だけが更衣室に入るように。 呼び止めて、最もらしく、神代は大丈夫そうかと聞いた。 それに藤白は大丈夫だと言って、そして俺を見て言った。 「鷹来、お前は瑛翔のこと泣かすなよ」と。 胸が痛かった。 もう、今、泣いてるかもしれない。 そんなことを思っていたら更衣室から神代が半裸で出て来て、教室の外へ出て行った。 藤白はすぐに神代を追いかけた。 それを見て俺も、 「ごめん!俺もう抜ける!」 「えっ?」 「ちょ、鷹来くん!?」 止める言葉を無視して、教室を出た。 「神代」 「え、あれ、鷹来くん?どうしたの?」 まだ教室の前にいた神代に声を掛けた。 そして一緒に空き教室へ移動した。 神代は更衣室であったことを話してくれた。 原因は俺にもあるのに、神代には何も話さないで、俺は本当に最低だ。 「鷹来くん」 「何?」 「消させてくれるって言ったよね」 それだけ言って、神代は俺を見つめる。 優しくして欲しいって、抱きしめて欲しいって、その一言が言えない目の前の人に、こうやって今までも言えないことがたくさんあったのだろうと思うと、少しだけ苦しくなる。 俺は笑って、椅子に座っている神代を包み込むように優しく抱きしめた。 ふっと、神代の肩の力が抜けたような気がした。 神代が落ち着いてからは、文化祭を一緒に回った。

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