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第156話

Another story side-鷹来珀音- お試しで付き合い始めて、知らない神代を知っていくのは楽しかったし、悲しそうな笑いかたじゃなくて本当に楽しそうに笑うし、それを俺に向けてくれるのが嬉しかった。 気づいたら、本当の意味で好きになってた。 守ってやりたいと思うようになってた。 自分だけを見ていて欲しくなってた。 ずっと笑っていて欲しいと思うようになってた。 久城のせいで壊れて欲しくなかった。 でも、 本当のことが言えなかった。 興味本位だったのは紛れも無い事実だ。 それに、初めて話しかけた時、久城に見張ってくれてたらって言われたのを思い出したから、話しかけた。 気まぐれに、暇つぶしに、そんな軽い気持ちで近づいたから。 だから、それを正直に言って、 拒絶されるのが、 嫌われるのが、 それになにより、傷つけてしまうことが怖かった。 傷ついて欲しくないと思って付き合い始めたのに、結果、俺が傷つけてしまうことがとにかく怖かった。 このまま隠していたって、傷つけてしまうことに変わりはない。 だから正直に、全て話そうと、そう思った。 全部話して、それで、お試しじゃなくて、本当に付き合って欲しいと伝えようと。 決意したのに、いざ話そうとすると怖くて、一緒に笑い合ってる時間が楽しくて、何度も先延ばしにしてしまえば、修学旅行が始まってしまった。 -- 移動のバスの座席が神代は久城の隣で、心配で仕方なかった。 「神代、バス大丈夫だった?」 バスを降りてから聞くと、神代は笑ってそう言った。 「大丈夫だよ」 「本当に?席変わってもらおうか?」 「平気だって。鷹来くんって心配性?」 「瑛翔、そう言ってやるなよ。鷹来だって心配なんだよ」 藤白がそんな言い方をする。 俺は神代の向こう側を歩く藤白に視線を送る。 「俺だって、って言い方失礼じゃない?俺は神代のこと大切にしたいだけだし」 それは紛れも無い本音だった。 「それは十分分かってる」 俺と藤白の間を歩く神代は恥ずかしそうに、俺とも藤白とも視線を合わせないようにしていた。

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