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第157話
Another story side-鷹来珀音-
1日目は久城と話せずに終わってしまった。
どうしても、久城と話してから神代に伝えたかった。
ちゃんとけじめをつけてからにしたかった。
でも、神代とグループ行動もホテルも一緒で、自分を抑えることが難しかった。
つい、手を出してしまった。
2日目のホテルに戻るバスの中では、無防備なその姿に、思わずキスマークをつけてしまった。
見つからないように、耳の下辺りに。
その痕を見ては、なんだか幸せな気分になった。
そして俺がぐだぐだ後回しにしていたら、事が起こってしまった。
この日、久城と話をつけて、好きになったから、お試しじゃなく、ちゃんと俺と付き合って欲しいと神代に全て正直に言うつもりだった。
真剣に言えば神代も分かってくれるだろうと思った。
神代には自販機に行くと言って、部屋を出て久城の部屋へと向かった。
久城の部屋に着いたが、久城はいなかった。
「他の部屋に行ってくるって出て行ったぜ」
同室の奴に他の部屋に遊びに行ってると言われた。
こんなことなら、夕食後にでも捕まえて、すぐに話をすればよかったと後悔した。
部屋に戻ると神代ともうひとつの声がして、中へと歩みを進めると目の前の光景に絶句した。
会いに行った久城がそこに居て、その下には神代が服を乱して組み敷かれていた。
全て遅かった。
久城が居るこの状況で俺が何を話しても、神代は信じてはくれないかもしれない。
それに俺が下手に動いて、久城が神代を傷つけることを言うかもしれない。
最悪の状況だった。
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