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第158話
Another story side-鷹来珀音-
「なに、して…」
「何って、見て分かるだろ」
「んっ、やっぁ…」
それは、聞いたこともない、神代の甘い声。
頭が働かない。
「たか、ぎっくんっ、助けっ…て!ぁ…」
「瑛翔?こっちに集中しような?」
「やぁ、あっ…やだっ…あ、あっ…」
久城は俺のことなんか無視して、神代の身体に触れる。
俺は、キス以上のことで、神代に触れたことはない。
「ひっ…やっ…」
「ふっ、珀音?お前は俺のこと止めないよな?」
今までの裏切りがあるんだからと、そう言われてる気がした。
久城は俺の気持ちを知らないはずなのに。
「っ…」
「やだっ、祥馬っ……鷹来くんッ…た、すけ…」
助けを求める神代に手が伸ばせなかった。
俺に、神代を想う資格はあるのか、分からなくなった。
久城にキスされてるのを見て、顔が熱くなった。
「なぁ、瑛翔?珀音との恋愛ごっこは楽しかったか?」
その言葉が俺の胸に突き刺さった。
俺は、…
「……楽しかったよ」
「神代…っ」
もう、終わったかもしれない。
神代に遊びだと思われてしまった。
なにもかも手遅れになってしまったかもしれない。
俺が動けないままでいると、あろうことか久城は、神代に口淫を強要させ始めた。
苦しそうにえづく神代に、限界だった。
これ以上は見ていられなくて、止めようと近づこうとしたら久城は俺の方へ手のひらを向けてストップをかけた。
視線が合う。
それは神代に向けてた視線よりも鋭くて、そして視線は後ろのジーンズのポケットに向かった。
そこにはハサミが入っていた。
瞬時にはその視線の意味が分からなかった。
でも、すぐに分かった。
俺がこれ以上近づけば、それで神代を傷つけるつもりなのだと。
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