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第161話
Another story side-鷹来珀音-
「俺、お前に、瑛翔のこと泣かすなって言ったよな?」
「ごめん、、」
俺は藤白と目が合わせられなかった。
俯いて、自分の靴を見つめる。神代と色違いの靴を。
「昨日、何があった?何で瑛翔のこと助けなかった?」
「…っ、助けたかったよっ。でも、出来なかったんだ」
握った拳に力が入る。
「何で?あんなに傷ついてるのに、助けなかったのか?」
「…もっと、傷つけられると思ったから」
「どういう…」
「そんなの言い訳だって、藤白は思うかもしれないけど、久城は昨日ハサミを持ってたんだ」
「ハサミ…?」
俺は俯いたまま話し続ける。
「前に、久城が神代のこと、カッターで切りつけようとしたことがあったんだ」
「はっ!?」
「……神代から聞いてなかった?」
「聞いてない」
藤白にも、話せなかったんだな。
「脅しじゃない。久城は本気で、やろうとしてた。あの時は止められたけど、昨日は…無理だった。近づけば、先に久城が動くと思った」
「それで…」
「黙って見てるしかなかった。それしか出来なかった。俺は、咄嗟に何も考えられなかった。助ける術を、思いつけなかった」
顔を上げて、ようやく藤白と視線を合わせれば、複雑な表情をしていた。
「神代のこと、泣かせてごめん…。傷つけてごめん。大切に…っ…でき、なくて…ごめん…っ」
涙がこぼれそうになって、俺はパッとまた俯いた。
「鷹来……お前、瑛翔のこと…」
「…っ、…好きだよ。本気なんだ…ちゃんと話して、許されるなら、お試しじゃなくて、真剣に付き合いたい」
「そうか…」
ぐいっと目元を袖で拭った。
「あのさ…このこと、藤白から神代には話さないで欲しいんだ。俺が、ちゃんと話したいから…」
「分かった。でも、お前もあんまり抱え過ぎんなよ」
「ふっ…藤白って男前だな」
「だろ?」
「ありがとう…じゃあ行くわ」
「あぁ、また後でな」
そして俺は藤白と別れ、部屋に戻った。
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