162 / 260

第162話

Another story side-鷹来珀音- 修学旅行中に話したかったけど、話すことは叶わなかった。 神代に拒否されたから。 仕方ないことだと思う。 修学旅行が終わってからにして欲しいと言われて俺は頷くしかなかった。 俺は待つしかなかった。 そして修学旅行が終わって、1日休んで、登校日。 ずっと神代のことを考えていて眠れなくて、遅刻した。 学校に着いたのは昼休みに入る前で、まだ授業中だったから、俺はいつもの空き教室に向かった。 神代と話すことばかりが頭の中にあったけど、まずは久城とのことをちゃんと解決しようと思った。 ちゃんとケリをつけてから、堂々と話せるように。 そして久城にメッセージを送った。 昼休みが始まれば空き教室から廊下に出て久城を待った。 すぐにやって来た久城と一緒に空き教室に入った。 話すことはただ一つ。 「なんだよ、話って」 教室に入るなり、すぐに問いかけられる。 俺はまっすぐに久城を見て口を開いた。 正直な、俺の気持ちを。 「神代のこと好きになった。だから、もう久城の言うことは聞けないし、神代のことを傷つけるようなことはできない」 「は?そんなの知らねえよ!好きになったとか、許すわけないだろ!」 「別に、久城の許可はいらない。これは提案じゃなくて、報告だから。俺は、お試しでなんて、こんな騙しているような形でなんて…神代とは、もう付き合えない」 「ふざけんな!何かしたらお前じゃなくて、瑛翔を傷つけるからな?」 久城は本当に神代のことが好きじゃないんだろうか? これは"嫉妬""独占欲"じゃないのか? 久城の考えてることが分からない。 「俺は、本気で神代のことが好きだよ。大切にしたい。傷ついて欲しくないし、傷つけたくない」 「はっ…何言ってん「久城は!……久城は神代のこと大切じゃないんでしょ?好きじゃないんでしょ?」 思ったより、大きな声が出た。 「は?お前に…」 「だって、久城には彼女がいるじゃん。彼女のこと大切にしてるんでしょ、好きなんでしょ?だったら、神代のことはもう手放してよ」 「なっ」 「散々傷つけて、神代が俺のことを許してくれるかなんて分からないけど、これ以上傷つけたくない。神代が許してくれるなら、俺は大切にしたい。久城が神代を傷つけるって言うなら俺は全力でそれを阻止する。話はこれだけだから。もう昼休み終わるし、戻ろう」 「おまっ…!」 久城の声を無視して俺は教室へ向かった。 俺がさっさと歩いて行ってしまえば、久城は何も言わずに俺の後ろを歩いている。 何を考えているのか、俺にはさっぱり分からない。

ともだちにシェアしよう!