163 / 260
第163話
Another story side-鷹来珀音-
ケリがついたとは言い難いかもしれないけど、俺の中ではもう終わった。
やっと。
これで、神代に話を聞いてもらえなきゃ意味なんてないけど。
そして放課後、早速俺は神代に声をかけた。
修学旅行は終わったのに、神代は…
「来週からテストだし、また今度でいい?俺、勉強したいんだよね」
そう言うと神代は足早に去ってしまった。
もしかしたら、って思ってたけど、神代は本当に俺とはもう話なんてしたくないのかもしれない。
もう、俺たちは終わったことになってる?
それから、神代に何度話しかけても「また今度」と言われ続けた。
修学旅行から帰って来たばかりの頃は、もうすぐテストだからと断られた。
少しだけでいいからと、何度も話しかけたが、返ってくる言葉はいつも同じで、
"また今度"
でも、そのまた今度が来る気配はない。
せっかく久城と話を付けたのに、これではどうしようもない。
テストが終わればすぐに冬休みに入ってしまった。
終業式の日にも声をかけたが、用事があるとさっさと帰ってしまった。
冬休み中にメッセージを送っても、祖父母の家に帰省するからまた今度と言われ、その後も何度かメッセージを送ったけど断られ続けた。
そして年が明けた。
もう、俺の話なんて聞きたくない?
ここまで拒否されるんだから、もう無理なんだろう。
だから、今日で声を掛けるのは最後にしようと思った。
今日、声を掛けて、それでも断られたら、もう終わりにしよう。
そう決意して、声を掛けた。
「神代っ!」
廊下を歩いている神代に後ろから声を掛けた。
「っ…鷹来、くん…」
「話をっ…」
「…なんで?」
「えっ?」
「何で、こんなに拒否してるのに、話しかけてくるの?」
いつもとは違う反応が返ってきた。
「っ、それは、俺が話したいからっ…」
「……俺、忙しいから、また「また今度?いつになったらその"今度"は来る?」
"また今度"と、何度聞いたか分からない言葉を言おうとしたから、俺はそれを遮って言葉を被せた。
今までだったら、声を掛けて何かと理由をつけてまた今度と断るだけだった。
でも、今日は違ったから。
「…っ」
「お願いだから…、話を聞いて。聞いて、俺のこと嫌いになってもいいから。聞いたら俺のこと切り捨てていいから…っ」
「……分かった」
ようやく聞いてくれる気になった神代と、いつもの空き教室へ向かった。
ともだちにシェアしよう!