165 / 260

第165話

鷹来くんは今までに見たこともないくらいに間抜け面をしていた。 「は?…えっ?な、に…えっ?」 「…ふはっ、鷹来くん顔やば…」 俺は思わず噴き出す。 「えっ?待って…どういうこと?」 「俺は、鷹来くんのこと好きになってる。だから、お試しじゃなくて、ちゃんと付き合って欲しい。別れたくない」 「っ…かじ、ろ…っ」 鷹来くんは涙目になって、俺の腕を引き、力強く抱きしめた。 数ヶ月振りの温もりは少し懐かしくて、心臓がギュッとして、想いが溢れて、体も心も温かくなった。 「ねぇ、鷹来くんは?」 「っ…俺も、好きだよ…ッ…離したくない」 抱きしめる腕に力が込められた。 「鷹来くんって意外と泣き虫なんだね?」 「…神代もでしょ」 「ふっ、そうだね。お揃いだね」 「あーもうっ…ほんと無理…好き…」 耳元で呟かれれば恥ずかしくて、顔が熱くなる。 「神代、耳まで真っ赤」 「だって…それは鷹来くんがっ」 「うん、俺のせい。嬉しい…」 甘い。 言葉も、声音も、全部が。 「俺、鷹来くんのこと、好きになれて良かった…」 「っ…うん」 そう言ったら、頷いた鷹来くんの声は震えていた。

ともだちにシェアしよう!