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第169話

「瑛翔」 放課後、鷹来くんと一緒に教室を出たところで、祥馬に話しかけられた。 「祥馬…」 すぐに、鷹来くんが俺の前に立った。 「神代に何か用?」 「…珀音に用はない」 「神代一人では行かせられない」 「チッ…分かった。お前も一緒でいい」 舌打ちをすると不機嫌そうに言い放つと、くいっと顎で空き教室を指した。 祥馬が先に教室に入り、続いて鷹来くんが入り、俺も入った。 祥馬と向き合うように立った。 「瑛翔」 「…祥馬、俺…」 名前を呼ばれて、視線が絡み合う。 速くなってしまう鼓動は、緊張からなのか… 「俺、鷹来くんと付き合うことにしたから」 「あんなことがあってもお前は珀音と一緒に居たいのかよ。珀音はお前のこと別に好きじゃ…」 「それは違う」 「ふんっ…まぁそんなのどうでもいいけど。付き合うったってどうせまだ、"お試し"なんだろ?」 鷹来くんをチラッと見てから、再び俺へ視線が移る。 「違う」 「は?」 「俺、鷹来くんのこと好きだよ。祥馬よりも」 「あ?」 発せられた低い声に、ビクッと肩が揺れた。 「何言ってんの?」 俺を見つめる目が怖くて、パッと顔を下へ逸らした。 向き合うのが怖い。

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