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第171話

「っう…!」 首に巻いていたマフラーを掴まれて、思い切り引っ張られたから。 「っ、!?久城、お前何してっ…!」 「…っ…」 鷹来くんが咄嗟に俺の左腕を掴む。 それでも容赦なく引っ張るから、更に苦しくなって、鷹来くんは俺の手を離すしかなくて、俺は後ろへ下がらざるを得ない。 「しょ…、ま…っ…」 すぐ後ろに祥馬の気配を感じたところで、フッと首元が弛んだその瞬間、首筋へ痛みが走った。 久々の感覚。 「いっ…た…!」 咄嗟に首元に触れようとしたら、その手は祥馬の髪に触れた。 その髪を掴み、引っ張るも離れてはくれない。 その間も歯が食い込んでいく。 「ぃい…っ…!」 「久城っお前、やめろ…!」 もう何が起こってるのか、俺には理解できなかった。 気づいたら、俺から祥馬は離れていて、鷹来くんが祥馬のことを殴っていた。 ガタンと、大きな音を立てて机が倒れた。 そこからはあっという間で、 大きな音に、他の生徒が教室へ入って来て、その後すぐに先生が来て、そして鷹来くんと祥馬は職員室へ連れて行かれ、俺は保健室へと連れて行かれた。 「喧嘩でもしたの?」 「いや……」 保健室に来たのはあの日以来だ。 「神代くん前にもここ怪我してたよね?これ、傷が残りそう」 何も答えなかった俺に、更に突っ込んで聞いてくることもなく、傷の手当てをしてくれた。 「……」 手当ても終わり、俺は保健室を後にして、職員室へ向かおうとしたら担任の先生がこちらへ向かって歩いて来た。 「あぁ、神代。怪我はどうだ?大丈夫か?」 「…あ、はい、大丈夫です」 「そうか。とりあえず今日はもう帰っていい」 「あの、鷹来くんは…」 「…今話を大方聞き終わって、学年主任と話してる。お前のその怪我は久城がやったんだよな?」 「……はい」 「それが原因で鷹来が久城を殴ったと…」 これはまずいのではないかと思い始める。 「あの、鷹来くんは俺を…」 「ちゃんと分かってる。でも、手を出したのは事実だ。それは久城も同じだが…」 俺のせいで… 「おそらく二人とも謹慎処分になるだろう」 そして結局、鷹来くんは一週間、祥馬は5日間の謹慎処分となった。

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