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第173話

どうして、こういう時に限って佑嗣はいないんだろう。 部活の試合で、佑嗣は公欠だった。 佑嗣に相談しようと思っていたのに。 もっと早く相談しておけば良かった。 「神代〜次の数学当たるんだけど、ここ教えてくんない?」 「ん?いいよ。…あぁ、ここ途中式で間違ってるよ」 「え?あー!ほんとだ!それで、これってこの公式でいいんだっけ?」 「うん、そうそう」 最近はいつも佑嗣か鷹来くんと一緒に居たから、こうやってクラスメイトと話すのも楽しい。 なるべくあのメッセージのことは考えないようにして1日を過ごした。 そして、放課後になり学校を出たところで祥馬からメッセージが届いた。 恐る恐るメッセージを開く。 "全部壊す" 「っ…」 スマホを持つ手が震えた。 やっぱり、無理だ。 俺には耐えられない。 いつから、こんなに弱い人間になってしまったんだろう… 俺はその勢いのまま鷹来くんに電話した。 『もしもし?』 「あ、の…鷹来くん………」 『……何かあった?』 言葉を上手く紡げないでいると、鷹来くんは俺の様子にすぐに気づいてくれたのか、そう尋ねてきた。 「鷹来くん…っ、あの、俺…っ……」 『神代、一回落ち着いて。今どこ?』 「学校出たところ…」 『今から行くからそこで待ってて』 「だ、だめでしょ。謹慎中なのに見つかったら…」 『でも放っとけない』 「でも…」 『…じゃあ今から家来れる?』 「うん…」 そして、住所を送ってもらい、地図アプリを頼りに鷹来くんの家へと向かった。

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