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第178話
「っ!?」
振り返るとそこには私服姿の祥馬が居た。
「な、んで…」
「制服って…、学校終わって今の時間まで珀音と会ってたのか?」
「……」
何も答えずに離れようと一歩後ろへ下がると、グッと掴まれた手に力が込められて、祥馬との距離は一定を保ったままだ。
どうしよう、と頭の中で繰り返し考える。
そもそも祥馬はどうして…
「瑛翔、本当に珀音のことが好きになったのか?俺よりも?本当に?俺がダメだから珀音の方にいったんじゃないのか?」
「…っ、俺は」
「苦しみたくないから、珀音の方へ逃げたんじゃないのか?」
「それを、祥馬が言うの?」
「珀音のことを好きだと思った方が楽だから、そう思い込んでるだけじゃないのか?」
「違う…」
首を振って祥馬の言葉を否定する。
「じゃあちゃんと拒否できるのか?」
「は…?何言ってんんッ…!」
掴まれていた腕が急に引っ張られ、唇が重なった。
俺がそれから逃れようと顔を逸らすと、反対の手で顎を掴まれて無理やり祥馬の方へ向かせられ、再び唇で唇を挟むようにキスが繰り返される。
「んっ…やだ、…!んぅっ、」
声を出したその時、待ってましたと言わんばかりに舌が口内へと入ってきた。
くちゅくちゅと音が耳に響く。
掴まれてない手で、俺は祥馬の胸を叩く。
それでも祥馬はキスをやめない。
祥馬のいう拒否は、きっと、傷つける方の拒否だ。
舌を思い切り噛めばいい。
下半身を思い切り蹴ればいい。
そういう拒否だ。
でも、俺にはできない。
俺は鷹来くんのことが好きだけど、結局まだ祥馬のことも
忘れられてないから…。
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