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第179話
「…ほら、な」
唇が離れる時、俺たちの間に糸が紡がれ、祥馬は俺の唇をペロリと舐めた。
「はぁッ…」
「お前は俺を拒否しない」
「違うっ、してる…祥馬が無理やり…」
「あんなの拒否じゃない」
祥馬の手を思い切り振り払った。
「拒否してるっ、もう俺に関わらないで」
俺は走ってその場から去った。
さすがに祥馬も追ってくることはなかった。
祥馬の考えてることが、思ってることが分からない。
俺のことを一生好きにならないとまで言った祥馬。
どうしてここまでするのか、俺には理解できない。
俺のこと、好きじゃないんでしょう?
俺たちは友達にすらもう戻れない。
壊れた関係は、修復なんて出来ない。
家に着いて、鷹来くんからメッセージが届いた。
"もう着いた?ちゃんとあったかくして寝なよ。おやすみ"
「鷹来くん……」
俺は祥馬に会ったことを言えずに、おやすみ、とだけ返事をした。
こうやって、鷹来くんに言えないままのことが増えるんだろうか…。
こんな俺を、鷹来くんは好きでいてくれるのだろうか。
「嫌われたくないな…」
正直に言うよりも、隠してる方が罪悪感が募ることに、俺は気づかなかった。
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