184 / 260
第184話
同じ電車通学でも、地元が違うのだから当然降りる駅は違って、俺は一人で自宅最寄の駅で降りた。
「意味なかった…」
駅のホームで一度立ち止まって時間を確認する。
寄り道してたから、そろそろ佑嗣が部活を終えて帰ってくる時間だった。
「聞いてみよ…」
佑嗣にメッセージを送ると、すぐに"あと一駅だから待ってて"と返事が来た。
そして数分後に電車が駅に入ってきた。
「お待たせ。家までの道で昨日は会ったんだったね」
「うん、そう…」
「こっち方面誰か居たっけな?」
「同中でこっち方面の人いるとは思うけど、話したことないし…」
同中で同じ方面の人は数人いるが、話したことない人ばかりで、話したことはあっても仲が良いとは言い難い人と一緒に帰るのは正直気まずい。
「変なメッセージは祥馬から来てない?」
「うん、来てない…」
「そう…。とりあえず鷹来が戻って来るのは明後日だし、明日は一緒に帰ろう」
「でも部活は…」
「明日顧問がいないから休みになったんだ」
「…本当に?」
「ははっ、本当だよ。迷惑とかこれっぽっちも思ってないからそんな気を遣わなくていいよ」
トンと肩を叩かれる。
俺を見つめる佑嗣は優しく笑った。
「じゃあまた明日、朝迎えに来るから」
「うん、ありがとう。また明日」
家の前で佑嗣と分かれ、俺は家の中に入った。
この時点で、違和感に気付くべきだった。
でも、予想もしていなかったから、頭の隅にもなかったから、何の意識もしていなかった。
「あ、おかえりー」
リビングから母さんの声がして、返事をしてから自室へ向かった。
後ろで母さんが何か呟いていたが、聞こえなかった。
ともだちにシェアしよう!