186 / 260
第186話
「考えてた。謹慎中、ずっと…。昨日、家に帰ってからもずっと」
祥馬は俺の目を見て話し出す。
「忘れてほしくなかった。そして、幸せそうに笑うお前が、許せなかった。珀音といるお前を、お前たちの、その関係を壊したくなった」
「そ、んなの…勝手だよ」
いつもと違う、真剣な表情に俺は目を合わせていられなくて、視線を下げた。
「分かってる。拒絶したのは俺だ。あの時言った言葉に、嘘は一つもなかった」
ズキンと胸が痛む。
不意に祥馬が立ち上がった。
俺はパッと視線を上げて、椅子から立つ準備をした。
「……でも、そうやって、警戒されることに腹が立ってしょうがない」
「…それは」
「分かってる。全部分かってるんだ。俺のせいだって。でも、」
俺の方へ伸びてきた手を避けた。
伸ばした自らの手を、祥馬はぎゅっと握った。
昨日までの祥馬ならそのまま無理やり俺に触れていた。
でも、そうじゃない。
明らかに、何かが違う。
それでも俺は…
「祥馬、俺はちゃんと前に進みたいんだよ」
「そんなの、許さない」
「どうして…祥馬はもう、俺のことなんて嫌いでしょ?俺は、祥馬のこと嫌いになんてなりたくない…だから…」
祥馬と視線を合わせた。
切ない表情を浮かべる祥馬に、胸が締め付けられた。
「瑛翔が、佑嗣とキスしてるのを見て、取られたくないと思った。でも、あの時の俺は、澪央のことが大切で、手放したいとは思わなかった。
どちらかを手放すなら、瑛翔一択だった」
俺が、今傷つくのは違う。でも、どうしても心が痛む。
「でも、瑛翔と一緒にいる時間が減って、全然話せなくなって、佑嗣と笑い合ってるのを見て、珀音と一緒に居るところを見て、そこには俺も居たはずなのに、居なくて…、全部お前のせいだって、何度も傷つけた…」
「祥馬…」
ともだちにシェアしよう!