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第186話

「考えてた。謹慎中、ずっと…。昨日、家に帰ってからもずっと」 祥馬は俺の目を見て話し出す。 「忘れてほしくなかった。そして、幸せそうに笑うお前が、許せなかった。珀音といるお前を、お前たちの、その関係を壊したくなった」 「そ、んなの…勝手だよ」 いつもと違う、真剣な表情に俺は目を合わせていられなくて、視線を下げた。 「分かってる。拒絶したのは俺だ。あの時言った言葉に、嘘は一つもなかった」 ズキンと胸が痛む。 不意に祥馬が立ち上がった。 俺はパッと視線を上げて、椅子から立つ準備をした。 「……でも、そうやって、警戒されることに腹が立ってしょうがない」 「…それは」 「分かってる。全部分かってるんだ。俺のせいだって。でも、」 俺の方へ伸びてきた手を避けた。 伸ばした自らの手を、祥馬はぎゅっと握った。 昨日までの祥馬ならそのまま無理やり俺に触れていた。 でも、そうじゃない。 明らかに、何かが違う。 それでも俺は… 「祥馬、俺はちゃんと前に進みたいんだよ」 「そんなの、許さない」 「どうして…祥馬はもう、俺のことなんて嫌いでしょ?俺は、祥馬のこと嫌いになんてなりたくない…だから…」 祥馬と視線を合わせた。 切ない表情を浮かべる祥馬に、胸が締め付けられた。 「瑛翔が、佑嗣とキスしてるのを見て、取られたくないと思った。でも、あの時の俺は、澪央のことが大切で、手放したいとは思わなかった。 どちらかを手放すなら、瑛翔一択だった」 俺が、今傷つくのは違う。でも、どうしても心が痛む。 「でも、瑛翔と一緒にいる時間が減って、全然話せなくなって、佑嗣と笑い合ってるのを見て、珀音と一緒に居るところを見て、そこには俺も居たはずなのに、居なくて…、全部お前のせいだって、何度も傷つけた…」 「祥馬…」

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