187 / 260

第187話

「今まで、酷いこと言って傷つけたし、怪我もさせた。でも、本当は嫌いになんてなってない」 「っ…」 「佑嗣だけは許さないなんて言っておきながら、珀音と付き合うことだって、結局許せない。相手が女だったら良かったのにって何度も思うようになった」 祥馬は一歩、俺に近づいた。 俺は椅子から立ち上がり、手を前に出してストップをかけた。 「待って…」 「瑛翔、俺は」 「待って!言わないで…俺は聞きたくない」 その先の言葉を、聞いてはいけない気がした。 首を振って拒否する。 「聞けよ」 「やだよっ、俺は鷹来くんが好きなんだよ…祥馬は桐崎さんのことが好きで、大切でしょ?」 「澪央とは別れる」 「っ!!!」 そんな言葉が、祥馬の口から出るなんて、想像もしなかった。 「だから瑛翔…俺のものになれよ」 「…っなれない……」 「好きなんだ…ッ、瑛翔のことが…」 絞り出すように紡がれた言葉が、苦しそうな祥馬の表情が、本気なのだと訴えている。 その言葉を、心のどこかで、ずっと待ってた。 それでも、桐崎さんと別れて欲しいなんて、望んだことは一度もない。 俺は鷹来くんを裏切れない。 いや、違う。 鷹来くんの方が好きだから。 だから… 「もう遅いよ。俺は鷹来くんが好きだから…」 「なら、奪うしかないよな」 腕を掴まれ、引かれる。 「な…んんっ、やめ、っ…」 そして唇が重なる。 でも、それは今までのものとは違って、無理矢理なのに優しくて、 一生もらえないと思っていた、 そして、 ずっと求めていた暖かさのあるキスだった。

ともだちにシェアしよう!