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第188話

「んぅ…」 「瑛翔…」 「やっ、しょ…ま…んっ」 ふと、頭に浮かぶのは鷹来くんの姿。 ドンッと力いっぱい祥馬を押した。 「だめ…俺はもう、鷹来くんのものだから。祥馬の想いには、応えられない」 「だめ?嫌じゃなくて?」 「…っ、……いやだ」 「俺は諦めない。だって瑛翔、お前まだ俺のことも好きだろ?」 全てが崩れた気がした。 「違う、好きじゃない…俺は、鷹来くんが…」 「そう言い聞かせてるだけだろ」 「違うっ!もう帰って」 「…今日は帰るよ。また明日、来るからな」 「来ないで」 顎を掴まれて、親指が唇を撫でる。 バッと顔を逸らす。 「触んないで」 「ふっ……好きだよ、瑛翔。また明日な」 耳元で甘く囁いて、祥馬はようやく部屋から出て行った。 パタリと扉が閉まって、俺はその場に崩れるように座り込んだ。 意味もなく髪を掻き乱す。 「…っ、…」 色んな想いが巡って、涙が溢れた。 「なんで…っ…」 修学旅行が終わって、鷹来くんの言葉を拒絶した。 あの時は、鷹来くんから拒絶されるのが、別れを告げられるのが怖かったから。 祥馬の言葉を拒絶したのは、好意を感じるのが怖かったから。 「俺は最低だ…っ…」

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