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第192話

「瑛翔?」 俺がなかなか口を開かないでいると、佑嗣は俺の名前を呼んで、様子を伺うように見てきた。 「…」 それでも何も言えないでいると、佑嗣は俺に近づき、ポンと頭を撫でた。 「無理にでも聞き出そうと思ってたけど、やめる。でも、鷹来にも相談できないんだろ?」 「佑嗣…」 「俺は、瑛翔が幸せになってくれればそれでいい」 「っ…」 「その相手が例え祥馬でも、瑛翔が幸せならいいと思ってる。まぁ、朝の反応からしてそうはならないとは思うけど」 スッと頭から佑嗣の手が離れる。 「瑛翔、お前は流されやすいから、ちゃんと、自分自身と向き合って、考える時間が必要だと思う。それに優し過ぎるから、拒絶し切れてないと、俺は思う」 「っ…」 その通りだ。 何も言ってないのに、佑嗣は全て分かってるみたいなことを言う。 「……れた」 「ん?何?」 「…祥馬に、好きだって言われた」 「……なるほどな」 「応えられないって言ったら、奪うって…」 「…それで、瑛翔は祥馬の言葉に揺らいだのか?」 俺は首を振った。 「俺は鷹来くんが好きなんだよ。…でも、ずっと、何年も好きだった祥馬を忘れられてもない。鷹来くんと付き合ってるのにっ…最低なんだ…」

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