192 / 260
第192話
「瑛翔?」
俺がなかなか口を開かないでいると、佑嗣は俺の名前を呼んで、様子を伺うように見てきた。
「…」
それでも何も言えないでいると、佑嗣は俺に近づき、ポンと頭を撫でた。
「無理にでも聞き出そうと思ってたけど、やめる。でも、鷹来にも相談できないんだろ?」
「佑嗣…」
「俺は、瑛翔が幸せになってくれればそれでいい」
「っ…」
「その相手が例え祥馬でも、瑛翔が幸せならいいと思ってる。まぁ、朝の反応からしてそうはならないとは思うけど」
スッと頭から佑嗣の手が離れる。
「瑛翔、お前は流されやすいから、ちゃんと、自分自身と向き合って、考える時間が必要だと思う。それに優し過ぎるから、拒絶し切れてないと、俺は思う」
「っ…」
その通りだ。
何も言ってないのに、佑嗣は全て分かってるみたいなことを言う。
「……れた」
「ん?何?」
「…祥馬に、好きだって言われた」
「……なるほどな」
「応えられないって言ったら、奪うって…」
「…それで、瑛翔は祥馬の言葉に揺らいだのか?」
俺は首を振った。
「俺は鷹来くんが好きなんだよ。…でも、ずっと、何年も好きだった祥馬を忘れられてもない。鷹来くんと付き合ってるのにっ…最低なんだ…」
ともだちにシェアしよう!