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第194話

「瑛翔は大切な友達だ」 あ…なんだ、そういう意味か。 「だからって普通キスするか?」 祥馬にだけは言われたくないだろうと思いつつ、黙って二人の会話を聞いていた。 「キスした時は、ただ泣き止んで欲しくて、それしか考えてなかった。瑛翔、今更だけどあの時はいきなりキスしてごめん」 「いや…俺もあの時は、いっぱいいっぱいだったというか…だから、気にしなくていいよ」 「…ってことだから。祥馬、お前は今後瑛翔に触らないでもらえる?」 「はぁ?」 「だって、瑛翔は鷹来のことが好きなんだ。分かってる?」 「俺だって、瑛翔のことが」 「あーそうそれ、何今更。さんっざん瑛翔のこと蔑んで、傷つけて、ボロボロにして、簡単に切り捨てた癖に。人に取られたら、やっぱり惜しくなった?」 「違っ…!俺はっ」 冷めた口調の佑嗣に、俺が言われてる訳じゃないのに、背中がぞくりとした。 「これからは手放すなら、それ相応の覚悟してから手放すんだな。まぁ瑛翔はお前の元には行かないけどな。お前みたいな最低クズ野郎の所になんて行く訳ないだろ。奪うとか、笑える」 佑嗣は嘲笑うように、祥馬を見下ろしている。 「な、っんで、佑嗣がっ…」 「何でって、言わなきゃ分かんない?」 「何なのお前っ」 「瑛翔は優しいから、こんな風にお前を拒絶出来ないからだよ。だから代わりに俺が言ってあげてんの。優しい瑛翔に漬け込んでんじゃねぇよ」 佑嗣は祥馬の胸ぐらを掴んだ。 ぐっと、祥馬は苦しそうに顔を歪めた。 「佑嗣っ…」 「ほら、瑛翔は優しいだろ。お前みたいなやつでも、庇おうとするんだから」 投げるように、佑嗣は祥馬の胸ぐらを離した。 祥馬はよろめきながら、近くの机に手をついた。

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