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第195話

チッと舌打ちをして、祥馬は教室を出て行った。 「はぁ…あいつ聞き分け悪過ぎ」 祥馬の聞き分けの悪さより、俺は佑嗣の言葉に驚いている。 「あの、佑嗣…」 「あーごめん、勝手なこと言って」 「ううん、ありがとう。俺はあんな風にはとてもじゃないけど言えないから」 俺の言葉に佑嗣は困ったように笑って、俺の頭を撫でた。 「瑛翔もあのくらい言えたらいいんだけど」 「あんな佑嗣、初めて見たよ」 「まぁ、俺そんなに怒らないから」 普段優しい人をキレさせると怖いってよく聞くもんな。 それから、祥馬が俺たちに話しかけてくることはなく、(佑嗣がそばに居てくれたから)放課後を迎えた。 「瑛翔帰ろ」 「うん」 教室を出る時、まだ祥馬は席にいて一瞬が目が合った。 俺はすぐに逸らしたが、祥馬からの視線はまだ感じる。 視界の端で、祥馬が立ち上がったのが分かった。 そして、 パシッと手を掴まれた。 「っ、なに」 まだクラスメートが教室に残っているから、大きな声は出せないし、振り払うことも躊躇われる。 「佑嗣にあんな風に言われても、俺は諦めないから。瑛翔、ちゃんと、真剣に、考えてくれ」 耳元で言われて、離れて近くで目の合ったその表情は、必死で、真剣で、すぐには逸らせなかった。 「瑛翔?」 なかなか教室から出てこない俺に不思議に思った佑嗣が教室を覗いてきて、祥馬と視線が合った。 「祥馬離せよ」 祥馬はあっさり俺の手を離した。 「じゃあ、別れたら連絡する」 「いらな…「じゃあな」 俺の言葉を聞く前に、祥馬は俺と佑嗣の横を抜けて教室を出て行った。

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