198 / 260
第198話
「…いや、知らない」
『本当に?祥馬くん、謹慎し始めてから様子がおかしくて…ううん、ほんとはもっと前から…修学旅行が終わったくらいからおかしいんだよ』
『澪央…』
「ごめんね」
『……ううん、こっちこそごめんね。瑛翔くんなら何か知ってるかもって思って、教えてくれるかもって思っちゃって…』
こんなに優しい子をどうして振れるんだろう。
あぁ、それは俺も同じか。
今はもう祥馬は桐崎さんの所にはいないらしい。
『ねぇ、瑛翔くん』
「ん?」
『もし、何か分かったら教えてくれる?』
「…うん」
『…ありがとう。急にごめんね。じゃあまたね。妃捺、』
俺は、できない約束をした。
何ひとつ、桐崎さんに話すことなんてできない。
『なんで…?』
ぼそぼそと電話の向こうで話し声が聞こえるが、何を話しているかまでは聞き取れない。
『ごめん、もう切るね』
電話口でそう言ったのは椎河さんではなく、桐崎さんだった。
俺と話すのがきっと気まずいんだろうな。
「うん、じゃあ…」
そして通話を切った。
「澪央ちゃん何だって?」
「好きな人ができたから別れて欲しいって祥馬に言われたって。その相手は誰かって…」
「あぁ、それで知らないって言ったのか」
「言えるわけないよ…」
「まぁな…それで?祥馬と桐崎さんは別れたんだ?」
「いや、それが納得できなくて逃げちゃったって言ってたから…」
「あーもうややこしいな…」
佑嗣は苦笑いで呟いた。
ともだちにシェアしよう!