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第204話

鷹来くんの言葉が理解できなかった。 別れる…? パッと顔を上げると目が合って、鷹来くんは俺から目を逸らさない。 俺は何も考えずに、口を開いた。 「…別れない」 それでも鷹来くんは表情を崩さない。 「でも、久城のことまだ好きなんでしょ?忘れられないんでしょ?久城と一緒にいられるんだよ。それも二股とかじゃない。神代だけを、好きでいてくれる」 「っ…俺は」 「俺と別れて、久城と付き合った方が、神代は幸せになれるんじゃないの?」 「そんなこと、言わないで…」 畳み掛けるように紡がれた言葉に、溢れ出した涙は止まらない。 「それでいいんだよ。神代は、もう苦しまないで。俺のことを裏切れないって思ってるんだろうけど、俺は」 両手を、ぎゅっと握られる。 そして、鷹来くんはとびきり優しく笑う。 「神代が幸せになれるなら、別れることを選ぶ。それは、裏切りなんかじゃない」 「違う…」 「違わない。神代、自分の気持ちに素直になっていいんだよ。俺のことなんて気にしなくていい」 握ってくれていた手が離れる。 温もりを失った手は、冷たくなる。 「神代、幸せになってよ」

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