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第206話

体が離れると、至近距離で見つめ合う。 「神代…好きだよ」 「俺も」 そう言って、俺は自ら鷹来くんの唇に自分のそれを寄せた。 「ん、」 一瞬触れただけで離れる。 それだけで、満たされた。 あぁ、本当に鷹来くんのことが好きだなと改めて思った。 心が暖かい。 「ありがとう鷹来くん」 「なんでお礼?」 「なんとなく」 「ふはっ…変なの」 そしてまたぎゅっと抱きしめられる。 「それにしても、まさか久城から好きって言われたなんて聞かされると思ってなかったな」 「…ごめん」 「謝らなくていいって。神代は何も悪くないでしょ」 「でも…」 「久城じゃない、俺を選んでくれた、それだけで十分。な?」 「鷹来くん…」 「…なぁ、俺のこと名前で呼んでよ」 するりと顎を撫でられる。 「っ…」 いつかも言われた。 そういえば、名前で呼ばされたことはあるけど、名前で呼ばれたことはないな、なんて思った。 「先に俺のこと呼んで」 今までの恋人に、名前で呼んで欲しいなんて思ったことなかったな。

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