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第208話

「そういえばどうして家に来たの?」 数えきれないくらいキスを交わして、今は二人でベッドに並んで腰掛けている。 そして疑問に思っていたことを投げかける。 「あー…会いたくなって」 「え、?」 「それに昨日は何も連絡なかったから、ちょっと心配で」 それでわざわざここまで来てくれたのか。 「ありがとう」 きっと、今日このタイミングで会っていなければ、祥馬に言われたことを、されたことをちゃんと言えてなかったかもしれない。 本当に、別れることになってしまっていたかもしれない。 「いや、こちらこそありがとう。かじ…瑛翔が、祥馬とのこと話してくれて、本当の意味で瑛翔に選ばれた気がする」 珀音は優しく笑って、俺の頬を撫でた。 「別れるって頷かれなくて良かった…」 頬を撫でていた手は後頭部に回され、反対の手は背中に添えられ、抱き寄せられた。 「珀音…」 「ずっと、瑛翔のこと大切にする。好きだよ」 胸が温かい。 「俺、幸せだよ」 俺も珀音の背中に両腕を回す。 すると、背中に回っていた手に更に力が込められた。 しばらく抱きしめ合い、離れればどちらからともなく唇が重なった。 「んっ…ふ…ぅ…」 舌が絡まり合い、どちらのか分からない唾液を嚥下する。 「はぁ…止まらなくなりそうだから、今日は帰るよ。また明日の朝、ここまで迎えに来るから待ってて」 「え、でも遠いし…」 「俺がしたいからいいの。な?」 「…分かった。待ってる」 珀音はふっと笑って、俺の頭を撫でてからベッドから立ち上がった。 俺は珀音を玄関まで見送った。 そしてまるで見計らったかのようにスマホが音を立てた。 そこに表示されていたのは、祥馬の名前だった。

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