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第209話
俺は電話には出ず、そのままスマホをベッド脇に置いた。
「俺がしっかりしなきゃ…珀音の為にも、………祥馬の為にも…」
寝る直前にスマホを見たら、祥馬からの着信数件に混ざって、珀音からメッセージが届いていた。
開いてみると
"ちゃんとあったかくして寝なよ。お腹冷やさないように!おやすみ!"
「ふっお母さんかよ…」
おやすみと返信して、俺は眠りについた。
「おはよ」
「おはよう」
家を出ると、そこには制服姿の珀音がいる。
なんとも変な感じだ。
駅に向かって並んで歩く。
「なんか違和感」
「酷いな」
珀音は笑いながら言って、俺の頭を軽く小突いた。
「見慣れないから…」
「まぁそうだろうね。これから慣れるでしょ」
「それって…」
"これからも迎えに来てくれるってこと?"
その言葉はある声によって紡がれなかった。
「瑛翔、に珀音?お前何で…」
駅に着いたところで、祥馬に出くわした。
俺と珀音を交互に見る。
「何で久城がいんの?」
「それはこっちの台詞なんだけど」
「瑛翔と一緒に行くからに決まってるでしょ」
「あ?"瑛翔"?」
名前で俺を呼んだ珀音を、祥馬は睨みつけた。
「何?」
それに睨み返す珀音。
俺がちゃんと言わなきゃ。
「祥馬、俺は祥馬とは行かない。珀音と行くから」
「"珀音"ね…ふぅん…まぁいいや。俺もまだ別れられてないから」
そう言うと祥馬は去って行った。
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