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第210話
「別れられてないんだ」
「あ、そうみたいで…それで祥馬の彼女の桐崎さんから電話が…」
「瑛翔に?」
「う、うん」
そういえばこの話はしていなかった。
俺は学校に向かいながら、電話があって、話したことを伝えた。
「なるほどな」
「祥馬の好きな人が俺だなんて、桐崎さんに伝えられるわけないのに、出来ない約束しちゃった…」
「瑛翔は優しいな本当に。でもさ、誰も傷つけないなんてはことは出来ないよ、きっと」
ポンと頭を撫でられた。
「うん…」
昼休みには俺と珀音、そして佑嗣で空き教室に向かった。
「藤白、ありがとう。瑛翔とのこと、いろいろ」
「いや。二人が幸せそうで良かったよ」
珀音と佑嗣が笑い合う様子に、俺はなんだか少し恥ずかしくなる。
「何照れてんの?瑛翔」
珀音が俺を見て、くすくす笑いながら頬をツンとしてきた。
「いや、なんかちょっと…」
視線を床に落として、誤魔化すようにパンをかじる。
「そういえば祥馬には会った?」
佑嗣が言うと珀音は眉間に皺を寄せた。
「あいつって昔からああなの?」
「ああって?」
「諦めが悪いっていうか…」
「…諦めは悪くなかったな。むしろすぐに諦めてたから。俺はあいつ、瑛翔に対しても、酷い言い方だけど今だけだと思ってるから」
「佑嗣…」
「そっか。彼女と別れてから何もしてこなければいいけど」
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