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第217話

と、その時だった。 「おー?なんだ、人数増えてんな?神代、頼んでたの終わった?」 先生が戻って来た。 俺は心から安心した。 「あ、お、終わってます。じゃあ俺帰ります」 そして俺は急いで資料室を出た。 「おー気をつけて帰れよー」 「あ、瑛翔っ…」 「ねぇ、久城くん!」 「うるさい!」 後ろから聞こえるそんな声を無視して。 教室の扉を開けるとそこには珀音がまだ机に向かっていた。 走って戻って来たから、少し息が上がってる。 そんな俺を見て、珀音は笑った。 「どうした?そんなに息切らして」 「…あの、葛西くんって知ってる?5組の」 「……葛西って、陽葵?」 「さっき、資料室で会って…」 「何もされてない!?」 「えっ?」 両腕を掴まれ、軽く揺さぶられる。 「珀音、どうしたの?」 「え、あー……」 珀音は俺から視線を逸らした。 「陽葵からは俺のこと聞いてないんだ?」 「え、うん…俺と珀音のことは話してないし、何も言ってなかったけど…」 もしかして友達、なのかな? 「そう…、もうすぐ書き終わるから待ってて」 そして反省文を書き終えた珀音はペンを置き、顔を上げた。 その表情はどこか困っているような、そんな表情に見えた。

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