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第218話

「陽葵の口から聞かされるよりいいと思うから、言うけど…」 そう言いながら口をもごつかせる珀音。 「えっと…」 「なに?」 「陽葵と…その、遊んだことあって…」 珀音の言う"遊ぶ"がただの友人同士に放課後ゲームセンターで遊ぶ、とかそういう類のものではないとすぐに分かった。 そうだ。 珀音の恋愛対象は女の子だけじゃない。 当然、俺の前にだって、女の子じゃない、男の相手がいた訳で… でも、遊ぶ? 「…それって、付き合ってはない、ってこと?」 「そう、遊び。陽葵もそれを望んでたから。丁度良かったというか……引いた?」 「……少し」 「だよね」 俺は、今までの彼女たちと、遊びで付き合ったことは一度もない。 好きになるつもりはなくても、自分なりに真剣に付き合って来た。 だから、遊びでという感覚がいまいち分からない。 「それで…?」 「あいつ、何かおかしくて…」 おかしいのは、先ほどのやり取りで充分に分かった。 「痛くされるのが好きみたいで、だから、神代何かされなかったかなと思って」 「…指、噛まされた」 「えっ、指?」 珀音は俺の両手を取った。 「いや、俺のじゃなくて、葛西くんの」 「あ、あぁ、そう、あいつそういうところがあって…他には?何もさせられてない?」 「首、噛まされそうになった時に、祥馬が来た」 珀音は眉間に皺を寄せた。 「久城か…久城には?何もされてない?」 「うん、平気。葛西くんが祥馬に絡み出して、先生が丁度来たからそのまま逃げて来ちゃった」 「それでいいよ。…もし、陽葵に何か言われても気にしないで」 「うん」 「よし、じゃあこれ出しに職員室寄るから…そのまま帰ろう」

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