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第224話

「…今の俺は、祥馬のこと完全に忘れられてない。それは認める。乱されてるのも事実だよ。でも、」 祥馬をまっすぐに見つめた。 「それが祥馬を選ぶことには繋がらない」 「瑛翔…」 「俺たちの間に始まるものはこの先もう何もない」 「俺が、瑛翔を傷つけてなければ、その答えは、変わってた?」 俺は、何度も噛まれた首筋に手を当てる。 うっすらと傷痕になったそれ。 この傷を見ると、何とも言えない気持ちになる。 「あの時こうしてたらとか…ああしてれば、とか…そんなのはもう、意味のないことだよ。今のこの気持ちが全てだから」 祥馬は少し泣きそうな表情をしていて、ぎゅっと胸が痛くなる。 「それは、祥馬も同じでしょ?」 「それでも俺は、ああしてたら変わってたんじゃないかって、ことに囚われて、意味のないことだと割り切れない」 手首をまた掴まれる。 「好きなんだよ…っ、瑛翔のことが」 「っ……俺、中学の時から祥馬のこと好きだった」 「え…?」 「当然、祥馬は俺のこと友達としか見てなかったと思うけど…」 手首を握る手に力が込められる。 「今まで付き合ってきた女の子たちは、祥馬が俺と合いそうって言った子たちなんだよ」 「え?」 「祥馬が言うから、付き合ってた。最低でしょ。最初は好きになろうと努力してた。でも、好きになれなくて、いつしか、祥馬以外好きになれないって諦めたんだ」 「瑛翔…」 「椎河さんの時も同じ。でも、やっぱり好きにはなれなくて…」

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