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第226話
涙を拭う。
それでも俺は言葉を止めない。
「俺のこと、男もいけるって珀音に言ったことも、仕向けたことも、」
「ごめん」
「だから、謝らないで」
「それでも…」
「俺はただ、祥馬のことが好きなだけだった」
「っ…」
「嫌がらせでも、気持ちがこもってなくても、傷つけられても、触れられることが嬉しいと思うこともあった」
「瑛翔、俺はっ…」
「でも、今幸せでいられるのは、今までのそれがあったからだから…。
祥馬とは幸せになれないけど、どうか、祥馬も幸せになってほ…」
言葉の途中で、包み込まれるように抱きしめられた。
「祥馬…」
「分かった」
「っ…」
ズッと鼻をすする音が耳元で聞こえた。
「祥馬…」
「瑛翔、1つ聞いていいか?」
そう聞く祥馬の声は涙声だ。
「うん。なに?」
「俺のこと好きになって、後悔してる?」
俺が祥馬の体を押すと、祥馬は力を緩めて、離してくれる。
祥馬を見つめると、その目は涙で濡れていた。
そして、不安げな表情で俺を見つめる。
「してないよ」
祥馬は、ふっと笑った。
「…ありがとう。ちゃんと話聞けて良かった。瑛翔も、珀音と幸せにな」
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