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第235話
「そんなことない!」
「でも、」
「瑛翔っ」
「んっ…!」
変わらず視線を合わせられずにいたら、珀音は俺の顔を乱暴に掴み上へ向かせたかと思えばキスされた。
「ん…ぅ…ふ、」
唇が離れて、ようやく俺は珀音を見上げた。
その表情は苦しそうで、胸が痛くなった。
こんな、醜い嫉妬して…
「ごめん、瑛翔」
「なにに謝ってるの?」
「嬉しいと思ってる事に対して…」
「は?」
苦しそうな表情から一変、口元を覆って笑っている珀音。
「なに笑ってんの?」
意味が分からない。
「瑛翔が嫉妬してくれてるのが嬉しくて」
「っ…!」
「俺は今までたくさん遊んできて、関係を持った相手が何人いたか正確な数は覚えてないくらいに最低なやつだよ」
両頬を包まれる。
「でも、こんなに好きになったのは瑛翔が初めてなんだ。今まで馬鹿なことしてたって思う。愛のない触れ合いがどれだけ虚しいことだったのか、瑛翔に触れて知った」
"愛のない相手とセックスしても虚しいだけだってこと"
いつだか、祥馬に言った言葉。
俺は祥馬に襲われて気づいたけど、珀音は俺に触れて気づいたの?
「瑛翔…?」
何も言わない俺に、珀音は不安そうな表情を見せる。
「俺のこと、軽蔑する?」
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