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第247話
腕を引かれるまま空き教室に入る。
「追って来ないな」
「葛西くんと一緒にいるんでしょ」
思ったより冷たい言い方になった。
案の定、そんな俺を見て祥馬は目を丸くしてる。
そして笑い出した。
「ははっ、瑛翔が、あの瑛翔が嫉妬してる」
「あの瑛翔ってなに…」
「今まで嫉妬とか、したことなかっただろ?」
「嫉妬くらいしたことあるよ」
「え、まじ?たとえば?」
意外そうに驚く祥馬に俺は言葉を紡ぐ。
「そりゃ、桐さ…あー……いや、」
「え、まさか」
「言わなくていい」
「澪央に?」
言わなくていいと言ったのに、口に出した祥馬を見ると、やっぱり笑っていた。
「傷つけてばっかりだったと思ってたけど、嫉妬もしてたんだな」
「…」
「そして今は葛西に嫉妬してんの?っていうか葛西と珀音はどういう関係?」
「それは…」
俺の口から言っていいものなのか。
っていうか言いたくないし。
「元恋人同士とか?」
「…俺からは言えない」
「瑛翔はちゃんと教えてもらってるんだな。それならいいけど」
なんか、祥馬が優しい。
「俺はいつだって優しい」
「え?」
「声に出てたけど」
「え…」
「ところでさぁ、気になってることあるんだけど」
「なに?」
祥馬は俺を見てふっと笑った。
「葛西に、教室で、どこを舐められたの?」
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