6 / 12
6
今日一日、いろんなことがあって、疲れたよな。
「えらい、えらい」
優護くんを起こさないよう、優しく頭をなでる。むにゃむにゃと寝言をいいながら寝返りをうつ優護くんからそっと手を離した。可愛くていつまでもなでていられるけど、起こしたら悪いもんな。
俺はマットレスの上に顎をのっけて、小さく上下する胸を眺めた。こんなにちっこくても、生きてるんだよなぁ。
洗面所から戻ってきた善は、俺の隣に腰を下ろした。
「……親が現れなかったら、俺らの子供にしちゃう?」
そんなことできるわけないのに、きっと、できないのもわかっていて、善はいたずらっぽく笑った。
「ばか。そんなことできないだろ。親も身内も現れなかったら、施設行きだよ」
「うん、知ってる。でも……子供にできたらいいのにね。俺、さっきみたいにあたふたしながらでも頑張ってるまこ、もっと見てみたいな。今はまだ何も知らなくても、まこは一生懸命お父さんやるんだろうな〜って思った」
「お前はどうなんだよ。ちゃんとパパ業できるわけ?」
「俺はね〜。まこのお尻に敷かれるお仕事で手一杯だからどうかな〜」
「敷いてもないのに勝手に滑りこんでくるの、やめて」
物理的に滑りこんできた手を掴んで追い払う。油断も隙もあったもんじゃない。
優護くんがもう一度寝返りをうち、俺たちのほうを向いた。2人であどけない寝顔を眺めていると幸せな気分になって、自分でも頬がゆるむのがわかった。
優護くんの丸くてすべすべの頬を、善が人差し指でぷにゅりとつついた。
「何してんの? 起きちゃうだろ」
「だぁってぇ、俺、まこのそんな顔見たことないもん。ただただ、愛おしい〜って顔。いいなぁ、いいなぁ、優護くんに嫉妬しちゃうなぁ」
「善ってさ、子供ができたら絶対面倒くさくなるパターンだよな。いい歳こいたおっさんが、子供返りしないでくださ〜い」
本気で嫉妬してないくせに、嫉妬してるんだぞアピールをしてくる善の胸元を引き寄せ、キスをする。ご機嫌をとっておかないと、あとあと自分が痛い目をみることになるのだ。
「んー!」
優護くんの寝言に驚き、慌てて唇を離した。優護くんの胸はすぐに規則的な呼吸に戻っていく。
優護くんを見つめる善の横顔が、愛おしそうにゆるんだ。優護くんが来なければ、一生見ることができなかったかもしれない善の表情だ。
「あー……ちょっとわかるな、嫉妬しちゃう気持ち」
「……ん? まこ、何か言った?」
「なぁんも」
唇を尖らせると、善はおねだりだと受けとったらしい。天井の明かりをさえぎってキスが落ちてきた。
「んっ…ふぁ…って、おい。この手は余計だろ」
スウェットにもぐりこんでくる手を捕獲する。指だけでも動かそうとしてくるあたり、ものすごく往生際が悪い。
「え?」
俺が抵抗すると、善はきょとんとした顔で手の動きを止めた。
「え、じゃないの。週半ばのこんな時間から盛ってんじゃねぇよ」
時刻はとっくに0時を過ぎている。いい子と、昼間働いてる大人は寝ている時間だ。
ともだちにシェアしよう!