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第7話

願いも虚しくダラダラと日々は過ぎていくんだね。 と、何となくまだ心に余裕があったのかもしれない。 二学期に入ると教育実習生が来た。 その実習生というのが、あのΩ女だ。 なんで!?どうして!? 僕は注目されるのも構わず、席から立ち上がってΩ女を睨み付けた。 拾人お兄ちゃんは慌てて「大丈夫だ」と視線を寄越して来たけど、僕からすれば全然大丈夫じゃない。 Ω女は余裕そうに微笑んでいる。 僕はあの悔しかった日を思い出して、悲しくて涙が出てきた。 恥ずかしくなって教室を飛び出す。 行くあてなんて無いけど、あのΩ女の居る教室になんか居たくなかった。 ヒート出来る身体が羨ましい。 きっと実習中にヒートが来れば、また拾人お兄ちゃんに迫るのだろう。 僕は体育館裏の建物の基礎であるコンクリートにちょこんと座り込んで涙を拭く。 誰かの走る足音がする。 拾人お兄ちゃんだったらいいなとは思うけど、朝の会をほっぽり出して逃げ出した自分が情けなくて合わせる顔が無いと、少し冷静な頭で考えてそのまま小さくなる。 足音は段々と近づいて来て、結局拾人お兄ちゃんに見つかってしまった。 拾人お兄ちゃんはそのまま僕を抱き抱えると、僕の泣き顔にキスの雨を降らせる。 僕は本当に拾人お兄ちゃんに愛されている。 それは分かってはいるけど、それを覆すのがΩヒートフェロモンだ。 αが簡単に抗えるのだったら、僕だってこんなに落ち込まない。 あのΩ女の所為で、僕以外のΩの所為で、拾人お兄ちゃんが理性を失った事実があるのが問題なんだ。 僕はアレにも誰にも負けられない。 僕は闘志を燃やし、拾人お兄ちゃんに「別のαの先生と可能な限り行動を共にして」と頼む。 理由を説明すると、ニッコリ笑って了承してくれた。 放課後はΩ女が下校するのを僕の目で確認するまで、拾人お兄ちゃんから離れないと血判状を叩きつける勢いで迫った。 僕は絶対にガードを緩めたりしないんだからね。 他のα先生が拾人お兄ちゃんの側に居る所為で無暗にヒート出来ないのか、僕の鉄壁のガードによってか、Ω女は中々計画しているだろう事を実行出来ずにいるらしく、実習初日の余裕の笑顔は消えて僕を射殺すような視線を投げつけてくるようになった。 その度に「児童を睨まないでください」と、拾人お兄ちゃんに繰り返し注意されている。 拾人お兄ちゃんのこの注意が良かったのか、教育実習生をチヤホヤしていたクラスメイト達も、最近はΩ女の様子にビクビクとしてクラスの空気が悪くなり、実習継続不可能と判断が降り、Ω女は実習時間を一週間残したまま大学に戻って行った。 あんな朝陽君を利用して他人の家でヒートするように来宅を合わせるような人間に、僕は負けてやる気なんか無い。 今回でΩ女の件が素直に終わってくれる事を切に願ってしまう。 だけどΩ女の射殺すような視線はまだ諦めてるようには見えないのが現実だ。 それにしても今回は場所が学校で本当に良かったと思う。教室でヒートしたらαのクラスメイトが被害に遭い、職員室であればαの先生達がΩ女のフェロモンテロに遭っていた。 それが無かったという事は、本当に拾人お兄ちゃんだけがターゲットなのだが、それはそれでモヤモヤする。 僕はヒートを迎えるまで、とにかく拾人お兄ちゃんを守る事を考えなければならない。 道は険しい登る山は高い、それでも僕は僕だけを愛してくれる愛しい人を守り切ってみせる!と、決意を新たにする。

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