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第5話
「ソファじゃ疲れ取れねーだろ、アホか、お前は?」
「アホって……言っときますけど、ウチのベッドはセミダブルなんですよ!先輩みたいな大男が一緒に寝たら、俺、転げ落ちます!」
「シングルベッドじゃねーなら、問題ねーよ」
どうしよう、さっきから心臓がうるさくて、幸太郎の声が途切れて聞こえている。
一緒にナオの家に行って、一緒に食事をして、一緒に寝るだなんて、まるで夢のようだ。
心臓が口から出てしまわないかと、半ば本気で心配になってもいる。
「あ!着替え!先輩、着替えどうすんですか?」
「お前ん家、乾燥機あるか?」
「浴室乾燥ならありますけど……?」
「んじゃ、それ貸せ。今着てるやつ洗って浴室に干しとく。朝までには乾くだろ」
ん──?
じゃあ一体何を着て寝るというのだろう。
下着はコンビニで買えるからいいとして、パジャマまで売っていただろうか。
「おっし、行くぞ!」
「ちょ、待ってください!まだ色々謎が!パジャマ……パジャマどうすんですか!?」
「そんなのいらねーよ。素っ裸で寝りゃいい話だ」
いやいや、それは困る。
裸の幸太郎がナオの隣で寝息を立てる姿を想像しただけで、鼻血が出そうになる。
「オニクロ、寄って行きましょう!あそこなら、スウェット売ってますから!」
「お前、さっきから何そんなに必死になってんの?男の裸なんてどうってことねーだろーが?」
「でも、俺、男にモテるって先輩言ってましたよね!?」
「安心しろ、俺にその気はない」
これまたグッサリと心臓を串刺しにしてくれたものだ。
というか、幸太郎はナオをどうしたいのだろう。
心臓をバクバクさせたかと思えば、串刺しにしてみたり、遊んでいるようにしか思えないのだが、気のせいだろうか。
「オラ、ちゃっちゃと帰んぞ」
「あ……はい……」
もう突っ込む気も失せた。
今日はキスシーンを見たせいで浮き足立って忘れていたが、坂上幸太郎とは本来とんでもなくマイペースな男だ。
それを忘れて無防備に空腹だの寝不足だのと主張したナオの方が、悪かったのかもしれない。
「先輩の裸……しっかりしろ、俺……男の裸なんてどうってことない……先輩の言う通りだ……」
いかなる場面においても理性的であれと、ナオは自分を叱咤激励した。
しかし、本当に大丈夫なのだろうか。
自分の貞操ではなく、ナオの方が幸太郎の貞操を奪ってしまったりしないだろうか。
「平常心だ、俺……先輩はゲイじゃないんだし……落ち着け……」
好きな人と共に一夜を過ごすということが、これほどの大イベントだとは知らなかった。
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