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第8話
そう問えば、ナオは「パプリカ、魚介類、ゴルゴンゾーラチーズ、ガーリックとかです」と涼しい顔で応じている。
「それだけ嫌いなモンが多いと、逆に迷わなくて済むんじゃね?」
「だからいつも頼むものは同じなんですよねぇ」
言いながら、ナオはスマホで電話をしようと番号を入力し始めている。
一体何を注文するのかと聞いていると、ミートスペシャルピザとカレーピザのLを頼んでいた。
「おい、Lピザ2枚も誰が食うんだよ?」
「あれ、多過ぎました?先輩、元バスケ選手だし、大食いなのかと思ったんですけど」
「人を見た目で判断するな、食う量は普通だ」
「なんだ、じゃあM2枚でもよかったんですね。でも、余ったら明日の朝食にすればいいか……」
まあピザのメリットは、余らせてもレンジでチンすればとろりとチーズが溶けて、焼き立ての味を再現できるところだ。
とりあえず食事を頼んだ2人は、今度は風呂をどうするかで揉め始める。
否、正確には風呂の後の幸太郎の衣服について、揉めていると言った方が正しいだろうか。
ピザを待っている間に入浴を済ませたいというのは、2人共同意見だ。
しかし幸太郎は風呂に入ったら今着用している衣服を脱ぎ、洗濯して浴室乾燥しなければならない。
「俺のスウェットでよければ、貸しますけど……まあ、明らかに着られないですよね」
体格の差というものは侮れない。
ナオは男性のMサイズで十分だが、幸太郎はLLだという。
「そもそも論なんですけど、俺達どうして一緒に食べたり寝たりすることになったんでしょうか?」
「お前が明日論文をバックレないためだ」
「そんなに信用ないんですか、俺?」
「前科何犯だと思ってんだよ?1度や2度じゃねーだろーが」
まあ確かにその通りではあるが、だからと言って寝食を共にする必要があるのだろうか。
「お前なぁ、分かってんのか?論文の締切が目前なんだぞ?あちこちフラフラされたら俺が迷惑なんだよ」
そっちだって、今日の昼間にこっそり抜け出して美女とキスしていたクセにとナオは思うが、口には出さなかった。
思い出すだけで胸が痛んで、泣きそうになってしまう。
「俺、先に風呂使いますね。先輩は食事の後にした方がいいですよ」
「しょうがねぇ、そうする」
ナオはそれきりバスルームへ入り、シャワーを浴び始めるのだった。
丁度ナオがシャワーを終えて脱衣所で着替えていると、インターホンが鳴らされた。
「あ、先輩すみません!出てもらっていいですか!?」
まだ素っ裸なので出るに出られず幸太郎に声をかけるが、返事がなかった。
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