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第9話
もしかしたら寝てしまったのだろうかと思い、ナオは素早く身支度を整えて玄関のドアを開ける。
「え、と……いくらですか?」
そう言えば、頼むだけ頼んで金額を確認していなかったことを思い出す。
確か財布に5千円札が入っていた記憶があるが、足りるだろうか。
「7,000円になります」
「ち、ちょっと待っててくださいね」
ナオは自分の財布を見て足りないことを確認した。
そして案の定寝ている幸太郎のジーンズの尻ポケットから財布を取り出し、中身を見る。
千円札が何枚か入っていたので、2枚ほど拝借することにした。
「すみません、お待たせしました!」
「丁度ですね、毎度ありがとうございました」
ピザ屋の店員が帰って行くと、ナオはドアを閉めて眠っている幸太郎の顔を見つめ、なぜだか昼間のキスを思い出した。
さて、どうしたものだろう。
熱々のピザが届いたので食べたいところではあるが、幸太郎が本格的に寝入ってしまっている。
起こしてもいいのだろうか、このまま寝かせておくべきか。
ナオはしばらく迷ったが、結局自分も畳の上にゴロンと寝てしまった。
ピザのいい匂いが鼻腔をくすぐるが、眠気に勝てないのも事実だった。
幸太郎が起きたのは、午後10時を回った頃だった。
「……寝すぎたか?」
そう言えばここはナオの家だったなと思い出して、起き出して電気を点ければ、ナオも畳の上でスヤスヤ眠ってしまっている。
ピザは届けられており、テーブルの上ですっかり冷たくなっていた。
「あーあ……やっちまったよ……」
幸太郎はとりあえず風呂を借りることにした。
ついでに手洗いで衣服を洗濯してしまおうと、洗剤と柔軟剤も使わせてもらう。
シャワーを浴び、洗濯をし、浴室乾燥のスイッチを入れて部屋に戻るが、ナオは起きる気配がない。
「今更ピザでもねーか……」
幸太郎は腰にタオルを巻き付けた状態で、まずはベッドの布団をはだけた。
次に眠っているナオを抱き上げ、ベッドの上に寝せてやる。
幸太郎もまだ何となく眠いので、タオルを巻き付けたままナオの隣に潜り込んだ。
それにしても、ナオは本当に童顔だと思う。
先日21歳になったばかりだが、高校生だと言っても十分通用しそうだ。
そんな幼い顔をした相棒に、幸太郎は昼間覚えた胸キュン状態に陥った。
大して好きになれなかった彼女とのキスを、ナオの唇で上書きしてもらってもいいだろうか。
幸太郎はしばし逡巡するが、ナオを起こさないようそっと唇を近付け、触れさせてみた。
しっとりと吸い付いてくる唇に、下半身が昂ぶり始めていることに、心底驚いた。
自分は男相手でも勃つのだと分かったからだ。
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