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第16話

ゼミが終わりようやく講義から解放されたナオは、幸太郎を探すことにした。 探したところで、特に用がある訳でもないのだが。 今日は幸太郎が出て行ってから、教授が4年生の卒業についての話をしてくれた。 来春大学を卒業し、社会に出るのが4年生なのだと。 だからこそ、幸太郎の隣にいたい。 そう遠くない未来に生活環境が変わって離れてしまうのだから、今のうちに幸太郎がそばにいる感触を身体に刻んでおきたい。 幸太郎のいそうなところをあちこち探していたナオは、ようやくキャンパスのベンチに座っている彼を見付けた。 「もう、探しましたよ、先輩」 「ああ、お前か……つーか、授業終わったのか?」 「さっき鐘が鳴ったじゃないですか。気付いてなかったんですか?」 「ちょっと、考え事しててな……」 ナオは幸太郎の横顔を盗み見て、いつになく切迫した表情だなと思った。 もしかしたら日菜子とのことを気にしているのだろうか。 「なぁ、久住?」 「はい?」 「……俺、お前のこと抱きたい」 は──? 何だか今すごい台詞を聞いた気がするのだが、気のせいだろうか。 普通「抱きたい」と言われればセックスを思い浮かべるのだが、ナオは男だ。 まさか日菜子の前で「付き合ってる」と言ってしまった手前、本当の恋人同士のように振る舞わなければとでも考えているのだろうか。 「先輩、今日具合悪いんです?ゼミの時も集中してなかったみたいで……やっぱり、日菜子さんのこと……」 「気にかかるんですか?」と問おうとしたところで、幸太郎が口を挟んだ。 「アイツのことは関係ねーよ。お前のことばっか考えてて落ち着かねーだけだ」 「っ!?」 「イヤなら断ってくれていい。けど、俺にちょっとでも心を許してくれてるなら……恋愛感情じゃなくて、先輩として好きって思うなら……抱かせろ」 ナオとしては天地がひっくり返ったという感じだった。 これまで一方的に幸太郎に寄せてきた想いが、こんな形で報われるなんて、考えてもみなかった。 抱かれたい。 幸太郎が気の迷いでナオに性交を持ちかけているとしても、抱かれた感覚が身体に残るのなら、そうしてくれて構わない。 「いいですよ」 「!?」 「なんで誘っておいて驚くんですか?」 「いや、案外あっさり承諾してくれたなって思っただけだ」 そりゃあそうだ。 ナオが幸太郎に片想いし始めてもう2年以上が経過している。 その間幸太郎は彼女をとっかえひっかえしていたが、ナオは一途に幸太郎を想って過ごしてきている。 「でも、俺初めてなんで……その、手順とかは知らないです」 「俺も知らねーよ」 「は……?」 「何となくネットとかで見た知識があるだけだ。んじゃ、行くか」

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