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第26話
どうしてこんなことになった──?
ナオが何をしたって言うんだ──?
日菜子から電話をもらって、来た道を戻る幸太郎は、生きた心地がしなかった。
日菜子曰く、「辛うじて無事」ということだが、この目で確認するまでは安心なんてできたものではない。
走っているうちに、大学が見えてきた。
だが幸太郎は正門から離れて行き、さっきまでナオと会っていた公園まで戻った。
ナオは満身創痍のように見えた。
先ほどまで着ていたベージュのシャツはボロボロになって公園内に捨てられている。
ナオは日菜子に借りたであろうカーディガンを羽織り、公園の陰の部分に日菜子に付き添われて座っていた。
「ナオ!!!」
幸太郎の鼓動が速くなる。
まだ恋人じゃないけれど、近いうちに必ず恋人にしてみせるという意思を固くしているからこそ、ナオが心配でたまらない。
近付くにつれ、顔面に負った赤黒い痣まで見え始めてくると、もう平常心を保てそうになかった。
「幸太郎、ちょっと……」
「ナオ!!!」
幸太郎に事情を説明しようとした日菜子だが、当の幸太郎はナオしか眼中に入れておらず、スーツ姿のまま地面に膝をついて、真正面から抱き締めた。
「大丈夫か……?」
「大丈夫ですよ……日菜子さんが助けてくれました」
「幸太郎、そのままでいいから私の話を聞いてて」
日菜子は自分のファンを名乗る男達3人が、幸太郎と懇意にしているナオを辱めようと画策し、それが現実になるところだったということを話した。
そもそもの発端は、日菜子が幸太郎に大学の正門でフラれた日、会社に戻るなり大泣きしてしまったのが原因だとも付け加える。
「私が迂闊だったわ……でも、まさか久住君の存在をアイツらが嗅ぎ付けていたなんて、思っていなかったの」
「大体の事情は分かった」
幸太郎はしばらくナオを抱き締めた後、彼の上半身から日菜子のカーディガンを剥ぎ取って日菜子の方へと差し出してきた。
そして今度は自分がスーツの上着を脱いで、それをナオに着せてやる。
「幸太郎、私……」
「何も言うな。俺は今イライラしてんだ」
「!?」
日菜子は思わず固唾を飲んだ。
こんなに怒りを孕んだ表情をする幸太郎を見るのは初めてだ。
さっきの3人組が幸太郎に見付かっていたら、まず間違いなく半殺しにされていただろう。
「まさか、アイツらがこんなことまでするなんて……」
「テメーの不手際だ。分かってんだろーな?」
「……ええ」
幸太郎は仕方なくタクシーを呼ぶことにした。
電車で帰ろうものなら、余計に目立ってしまう。
スマホでタクシー会社を検索し、一番目に出てきた会社に電話をかければ、5分ほどで車を回してくれるということだった。
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